加熱速度(かねつそくど)     [k18]

【用語の意味】
加熱の際の時間に対する温度の変化。℃/分や℃/秒・・・など。瞬間や短時間を示す場合と、温度区間の平均を示す場合などで示される。
【関連する用語】
 冷却速度   冷却剤
【補足説明】

しばしば熱処理の話題で「加熱速度が速い」「加熱速度を抑える(遅くする)」などの会話を聞くことがあるが、これは定性的・感覚的なもので定量的には表現しにくいものである。
品物を加熱するとき、それに加えられる熱は、伝導・対流・輻射(放射)で品物に伝えられるが、温度差によって瞬間速度は変わるので、「℃/分」などで表現するのも難しい。
熱処理で話題になる加熱速度は、これらの値を言うのではなく、「曲り(歪み)」に対処する方法として、「早いのは良くない」という内容を言っていると考えてよい。
品物を昇温するとき、その昇温速度が早くなるにつれて各部の温度差が生じるとともに、「変態点」が上昇する。平衡状態図では730℃付近にあるA1変態点は、ソルトバスなどで急速に加熱すると、800℃近くまで上昇する。また品物各部での温度差があると熱膨張差が出ることに加えて、変態(この場合は「収縮」)による体積変化で変形が生じる。そのために変態点を超えるときは「ゆっくり」加熱するのが良いという内容のことを言っているものといえるだろう。つまり、熱処理の加熱冷却については、「ゆっくり加熱して、速やかに冷やす」というのが基本・・・と教わってきた。
熱膨張と変態による長さ変化(適当な図ではないが)左図は同じ昇温速度で冷却速度を4種類で変えた場合の図であるが、熱膨張と変態時の長さ変化が示されている。A1変態時に収縮している様子が見られる。
ここに品物の温度差が加わると、複雑に寸法・形状が変化することが理解できる。
このことから、大きな品物や複雑な形状の品物の加熱時の変形を少なくするためには変態点の前後で「予熱」することが有効である。
「予熱」は一定の温度に保持することであり、段階が多いほうがいいが熱処理に時間がかかるので、800~850℃程度の1段階だけで行われることが多い。
高速度鋼の焼入れでは1200℃程度の焼入れ温度になるので、温度の不均一による熱膨張の変形防止のため、1000℃前後で予熱する場合も多い。当社では2段階の予熱をしてから焼入れ温度まで昇温している。


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