オーステナイトの安定化         [a24]

【用語の意味】

残留オーステナイトをその分解温度以下で焼戻しした場合などでは、マルテンサイトなどへの変態が起こりにくくなること、またはそのための処理。

【関連する用語】
  安定化処理  残留オーステナイト 加工誘起マルテンサイト
【補足説明】 

一般に焼入れ時に生成した残留オーステナイトは400℃程度以上の温度で分解をはじめ、560℃程度で消失する。しかし、冷間工具鋼の多くは低温焼戻しして使用されるので、焼入れで生じた残留オーステナイトは、正規の焼戻しをしっかりやって残留オーステナイトが時効変化しないようにすることが基本で、これを「残留オーステナイトを安定化させる」という言い方をする。(安定化処理)

通常の工具類では、焼入れ時のマルテンサイトが焼戻しによって「焼戻しマルテンサイト」に変わる200℃程度の焼戻しがなされるが、そうしておくことによって、200℃程度までは熱変化がほとんど生じないという考え方がある。
また、例えば高合金工具鋼SKD11で、焼入れ後にすぐにサブゼロすると64HRC以上の硬さが得られるが、焼割れの危険性を防止するために150℃程度で焼き戻ししてからサブゼロ処理をする場合があるが、この場合には、硬さが充分に上がらないことを経験することがある。このことも同様に、150℃の焼戻しによって「オーステナイトが安定化」した・・・ということが言える。

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残留オーステナイトの処理を間違うと早期破損につながりやすい。
話は少しそれるが、熱処理業界において「焼戻し1回でOK」という仕様でダイス鋼などが熱処理されているという話を耳にする。熱処理試験片のような小さな品物は焼入れ後に常温まで完冷すれば問題ないのだが、通常の熱処理では、焼割れ防止のために焼入れ後常温まで完冷(完全冷却)しないので、実際の熱処理をを知る熱処理従事者ならば、この仕様は非常に危険なことだと言えるのだが、世の中に「焼戻し1回でOK」がまかり通っているのは不思議でならない。SKD11はMs点が低く、もとより残留オーステナイトが多いので、低温焼戻しの場合は特に、焼入れの問題を補うために、きっちりと2回以上の焼戻しをする必要がある。

10%程度の残留オーステナイトはじん性値を上昇させるので「良い」と考えられている。確かに残留オーステナイトによってシャルピー衝撃値などは上昇する。これは「見かけの」じん性向上であって、寿命が向上するかどうかは別問題とかんがえているのだが・・・・。
・・・等など、残留オーステナイトに関係する話題は尽きない。


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