火花試験をやってみよう

火花試験の便利さ

火花試験方法については、JISに規定されて詳しく解説されていますが、近年、熱処理技能士の実技試験が写真判定に変わったこともあって、火花試験は特殊技術といえる領域になっていくような気がしていますが、ここでは、それの内容の範囲を狭めて、当社でも行っている利用法を紹介します。
実際に、火花試験によって鋼種判定する技術を習得するのは、かなりの訓練が必要ですので、ここでは、「何かの品物を加工して、焼入れしてみよう!」という人が、 「この鋼は、焼入れして硬くなるのか?」「焼入れできる鋼種なのか?」・・・などを見分ける方法などについて紹介します。

下記の資料は1970年代のもので、電気製鋼研究会編の特殊鋼便覧から引用させていただきました。(この書籍は、今は刊行されていないかもしれませんが、実用的な表記が多く今でも重宝しています)

この1970年ころは、当社の従業員の中にも「神様」が数名いて、「五感」で熱処理を司っていた時代でした。電子式の計器や計測器も充実していった時代でしたが、まだまだ人間の五感での仕事が幅を利かしていた時代でした。
1970年代の後半から1990年代にかけては、製鋼メーカー各社は新しい鋼種を矢継ぎ早に発表していていたために、お客様が熱処理を依頼される際に、しばしば間違った材料が混じることもあって、それを選別する場合には、火花試験が簡便で、役に立った時代でした。
当社では、近年でも、スクラップ廃材を鋼種別に選別することで高価に売却できるために、短時間で処理できる「火花による分別」を行っています。

現状では、蛍光X線などを利用した簡易分析機などが利用されて、誰にでも正確に成分分析ができるようになった一方で、火花検査で材料の判別ができる人は減る一方というのが現状でしょう。

費用がほとんどかからない「火花による鉄鋼種の判別法」ですが、やはり『技量』によるところは非常に奥深いものがあり、今どきの仕事スタイルにはそぐわなくなってきているのか、 繊細な火花を見て判別できる優れた技能者は少なくなってきていますが、知っておいて無駄ではないでしょう。

ここでは、JISに沿った方法を1から説明するのではなく、簡易的に材料を判別(区別)するために必要なポイントを紹介します。もっと詳しく知りたい方は、JISの火花試験方法などの書籍を参考にしてください。



◎その前に、火花以外の鋼種の見分け方について

熱処理依頼品の中に異材が混入することは、非常に大きな問題です。だから、熱処理業者としては、異材が混入させない対策は重要ですが、もしも正しい鋼種名と異なる材料(異材)が混入しても、優れた熱処理技能者は、五感で何かの異常を感じます。基本は、「比べること」ですが、たとえば、 機械加工した肌の仕上がり状態や色(光沢)の違い、野ざらしの品物では、さびの発生度合いの違い、マグネットを利用して品物を吊るときの、わずかな吸着力の違い、 そして、焼入れをした後の冷え方や完了したときの表面肌や色の違い・・・などで、「何か違う」と感じますし、もちろん、 熱処理後の硬さを比較すればそれがわかる場合もあるでしょう。
そして、そういう時に、自分の五感を確認するために火花試験をする・・・という手順が一般的です。


火花試験のやり方(エッセンス)

正式にはJIS G 0566の「鋼の火花試験方法」によって行うのがいいでしょう。しかしここでは、簡単に、とりあえずやってみよう・・・というレベルでの説明します。

火花試験は、グラインダー(砥石)を調べたい品物に当てて火花を観察して、その火花の形、色、量などで鋼種を分類します。 正しい判定をしようと思えば、 砥石の種類や回転数などの条件がありますが、ここでは、エアグラインダーでもディスクグラインダーでも何でもいいので、 削って火花が出るものを用意します。そして、太陽光が直接入らない「薄暗い」場所で、 砥石を鋼に当ててその火花を見ます。
この時、錆びや黒肌の部分ではなく、金属光沢のある、できれば、少し掘り込んだ面で観察するのが原則です。

すると、鋼種(成分)特有の火花を観察することができます。
正確さを求める場合は、鋼種名は分かった鋼材と比較するのがいいでしょう。 熱処理技能士の資格を取得するための実技訓練は、 成分がわかった鋼の火花を見続けることが基本になります。


まず、花の咲き方で炭素量(C%)を推定する
火花の見方1

火花試験をする目的の一つは、「焼きが入る鋼かどうかを見分ける」ことで、それを決定するのは主として「炭素量」です。 ナイフのような薄い品物であれば、炭素量が0.6%程度以上あれば、 60HRC程度の、ナイフに必要な硬さが焼入れによって得られますので、それを見分けます。

少なくとも、①ではダメで、②③でないといけません。ここでは、長く飛んだ流線の先端の「花の咲き方(破裂のしかた)」がポイントです。 ①では炭素量が少なすぎて焼入れ硬化しませんし、④⑤は、合金成分の多い鋼で、焼入れ温度が高いために、専門業者に熱処理を依頼することになる・・・という具合です。

少し、別の写真を見てください。これは、グラインダーで削ったものではなく、粉にした鋼材を、バーナーで燃焼させたときの写真です。

火花の見方2

この、長く伸びた細い線を「流線」、先端に咲いた広がった花のような部分を「破裂」と言います。特に、 破裂部分に小さく枝分かれした花がたくさん咲くものは使えそうだと判断します。
写真の④⑤⑥などのように合金成分が入ると紛らわしいのですが、グラインダーをきつく当てて長い流線を作っる場合と、 緩く当てて、できればグラインダーの回転が止まる前に「破裂」部分を見てやると、枝分かれしている様子が見えますので、 納得するまでゆっくりやることがポイントです。

②③は、炭素鋼で水焼入れして硬化する鋼種です。④のクロム鋼は油焼入れで焼きの入る鋼種です。⑤⑥については、合金成分が多いので、 他と違って、赤っぽい火花になります。⑥は、ほとんど火花が飛びません。
C%量と硬さの関係があります。こちらでおおよその推定ができます。

④⑤⑥にはクロム(Cr)などの合金元素が入っていて、炭素による花と少し違った形の花が見られます。特に⑤⑥などは合金量が多いために、 流線が短く、暗い色の火花になりますが、現実的には、1つだけの鋼種を見てそれの鋼種名を判別するのは大変難しいのですが、何となく、違う感じに見えるでしょう。

先にも書きましたが、これがわかるようになるまでには、すでに成分のわかった鋼種を使って、何度も何度も訓練しないと鋼種判別までにたどり着くことは難しいのですが、 とりあえず「使えるかどうか」という判断や「これとこれは違う」と判定するのは比較的簡単ですので、だれにでもできるでしょう。

参考:近年は、空冷で焼の入る高級鋼が多く流通しています。それらは、熱処理業者に依頼するのが無難ですが、それを見るために火花試験を利用するのもいいかもしれません。 ここにあるSKD11は1000℃以上の焼入れ温度で、SKH51は1100℃以上で焼入れします。SUSには、焼きが入るものもありますが、 ⑥SUS304は炭素量が低いので、焼入れでは硬くなりません。


◎・・・とはいっても、実際には難しい???

蛍光x線分析計

このように、火花試験は決して難しくない・・・のですが、道具がいりますし、実際にやろうとすると、成分がわかった標準試料を準備して、 それを用いて練習をしないと鋼種判定は難しいかもしれません。
当社では、近年は蛍光X線を利用した分析計を用いて判定するケースが増えています。これは写真のような装置で、取り扱いも簡単で、安全対策も施されており、数秒で成分値と鋼種を表示してくれる便利さのために、今後はこれによる判定が主流になりそうです。ただし、分析できる元素に限りがあり、鋼で重要な炭素量などの元素の分析ができませんが、他元素から鋼種を推定して表示してくれます。

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